「いや、俺らも今来たところだ」
待ち合わせをしている相手とは、もうお気づきのように、俺の従兄弟の海都。
「その子が亜美ちゃんか。へぇ…絶世の美女のって噂は本当だな」
そう言って海都がよろしく、と手を差し出すけれど、亜美はびくっとして俺の後ろに隠れてしまった。
「亜美ちゃんも男嫌いか?」
「いや、そういうわけじゃねぇけど…ほら、事件のとき男達がさ…」
「あー…それは仕方ねぇわ」
俺の服を掴む亜美の手が震えているのが分かる。
でもこれじゃあな…。
海都にだけでも慣れねぇと、この先ろくに外出もできない。
可哀想だけど…。
ごめんな、亜美。
心の中で謝って、俺の服を掴んでいた亜美の手を引っ張って俺の前に立たせる。
「っ…!!」
前に出された瞬間、亜美はくるっと回転し、俺の胸にしがみついてしまった。
うーん。
「亜美、少しで良いからあいさつ」
ポンと頭を撫でて諭すと、しばらくして亜美が海都の方に向き直り、ぺこっと頭を下げた。
「俺、高原海都って言うんだ。綾都の従兄弟。よろしくな」
海都にもう一度軽く頭を下げた亜美は、また俺の胸に顔を埋めた。
…そんなに服掴まれると伸びるんですけど。



