「よし、できた」
俺の足の上から降りた亜美は、笑顔でありがとうと口を動かす。
日本に来た時よりも表情は明るくなったし、飯も少しずつ量を増やして食べられるようになったから顔色も良い。
けど、相変わらず声は出ない。
精神的なものだから、自然に声が出るようになるまで待つつもりだけど。
…声、聞いてみてぇな。
「そろそろ行くか」
今日は日曜日で、ちょっと人と待ち合わせをしている。
亜美にとっては久しぶりの外出。
体調崩してて外に出られなかったから、亜美はご機嫌だ。
亜美と一緒に外に出ると、じわじわとした暑さが体を包んだ。
まだ6月なのに暑いな。
待ち合わせ場所である駅に向かう途中、すれ違う人達の目線を常に感じた。
まぁ、亜美の容姿じゃ見られても仕方ねぇか。