「その子の身の回りのことは、お前がやるんだ。いいな?」
「待てよっ、俺は納得してな…」
「いいな?」
「っ…!!」
クッソ…!!
こういう時だけ睨み効かせやがって。
結局俺は親父の命令には逆らえないんだ。
「綾都、警護ってのはただ敵の襲撃から命を守ることだけを言うんじゃねぇ。
それを、この任務を通して学んでこい。本当の警護の意味が分かれば、お前にも本当にやりたいことが見えてくるだろうよ」
本当の、警護…?
俺のやりたいこと…?
「わかんねぇ。なにが言いてぇんだよ」
「そのうち分かる。その子がフランスから来るのは明後日だ、準備しとけよ。
あぁ、そうだ。海都があの吉野財閥の令嬢のボディーガードを始めたらしい。
悩んだら『先輩』に相談するんだな」
海都が…?
マジかよ。
海都は俺の従兄弟。
小さい時から俺と一緒に稽古をしていて、俺の動きに唯一ついて来れる奴だ。
あいつもメチャクチャ強くて、よくどっちが強いか競ってた。
結局いつも引き分けだったけどな。
そんな海都が、女…しかも令嬢の護衛ね。
吉野財閥の令嬢って確か、可愛らしくて有名だったな。
あいつの護衛してるとこなんて、想像しただけで笑える。
…明日、久しぶりに海都と話してみるか。



