強くなりたい。
俺は…。
「兄貴、俺…強くなりてぇ。親父みたいに…いや、それ以上に。大切なやつ守るために、すぐにでも駆けつけてやれるような男になりてぇ」
「ふっ……なれるよ、お前なら」
兄貴はそう言って、休憩室を出て行った。
亜美、待ってろ。
許しがでたら、すぐにでも駆けつけてやるから。
だから…頑張れ。
目を瞑ると浮かんでくるのは、ふわっと柔らかく笑う亜美の顔。
俺は、その笑顔をずっと守ってやりたい。
側にいて、その笑顔が消えてしまわないように。
ずっと、お前を守っていきたい。
なぜこんなにも亜美を大切だと思うのか。
側にいたいと思うのか。
…俺がこの気持ちの正体に気づくのは、もう少し後のことだった。



