「その子は現社長の娘には変わりないが、問題なのは愛人との間に出来た子だっていうこと」
愛人…。
「まぁ、政略結婚だったらしいから、他に好きな女が出来ても不思議じゃない。
だが、愛人との間に生まれた子を現会長が許すはずもなく、すぐに産まれたばかりの赤子とその母親を母国…つまりフランスに強制的に帰したそうだ。母親はフランスと日本のハーフ人だったから」
親父は話を続ける。
「だが母親は翌年に他界。政略結婚を反対し、唯一現社長の味方だった会長の奥様が、赤子を心配してフランスに渡り、女1人手で赤子を育てた」
「その奥さんが殺害されたことで、その子の存在が明るみに出たっつーわけだな」
「あぁ。彼女はひどく傷ついている。特に精神的にな。親代りだった人を目の前で亡くしたんだ、無理もない。
かといって1人でフランスにいれば、またいつ命を狙われるかわからない」
だろうな、1人で生きていけるはずもない。
俺が逆の立場だったとしても、立ち直れないだろう。
「ということで、その子をうちで預かることになった」
……は?
あ?
今なんて言った?
預かるって言ったか…?



