おきざりにした初恋の話


「大丈夫ですか?」

そう言ってハンカチを差し出されて、顔を上げた。

目が合うと、優しく笑いかけられた。
その少し垂れた目尻には見覚えがある。
形のいい眉、薄い唇、笑うと現れるえくぼ。

壊れた歯車は、この手で組み立て直され、カチッと音を立てて動き出す。


そうして、10年越しのプロポーズを受けるまで、あと何秒?