ボクは生きていた。



るりちゃんに会えないまま死んでしまったのかと思ったのに…。


足が痛い。ここはどこなんだ?



ドアが開くと、男の子が入ってきた。


ボクをじっとのぞき込むと、にっこりして。



「お、起きたな。マジで死んでるのかと思ったぜ」


この人、何者…?


空でタカに追いかけられたことまでは憶えてるんだ、ボク。



でも、初対面のボクにこんなふうに話しかけるなんて珍しいな。


ボクは人間の言葉がわかるからいいけど、この人にボクの言いたいことはわからないだろう。


だって、ボクは鳥なんだから。


なのに



「よしよし。ほら、このエサ好きだろ?」



大きな皿の上に、から付きのエサとパンのかけらがあった。



「うまいか?良かったらパンも食べな」



ボクは犬じゃない。


そりゃあパンは好きだけど、るりちゃん以外の人にそうやって話しかけられると何だか変な気分。

まるでポチみたい。



「…でも本当に運がいいよ、お前。俺が見つけなかったら死んでたぜ」



―――そうか。


ボクはタカに襲われたけど、運良く食べられずに墜落してこの人に助けられたんだ。



ボクは改めて彼を見つめた。


あれ……?



この人、ボクの家で見たことがある。



「どうした、食べないのか?」



その、よく見るとカッコいい顔は。



るりちゃんの家の、


るりちゃんの机の上にある写真だ。



「何だよ。そんなに見つめるなって」



写真と同じ顔が言った。

優しく笑ってる。



「あ、お前ここにも小さな傷があるぜ。足だけじゃなかったのか」



ボクの足に当ててあるガーゼ、この人が手当してくれたらしい。



ということは、この人はボクの命の恩人なんだ。


「やっぱり病院に行かなきゃダメだ。とりあえず、今は…」


彼はそう言って、傷ついたボクの羽をきれいにしてくれた。