その日ボクは、久しぶりにるりちゃんと遊んだんだ。

るりちゃんの学校でテストっていうのがあって、
ボクも比呂もしばらく遊んでもらえなかったからね。

でも今日のるりちゃんはちょっと様子が変だった。

だから、比呂まで元気がない。

ボクたち(特にボク)は、るりちゃんを大好きなので、とっても心配なんだ。

るりちゃんどうしたのかな……。

て、比呂も言ってる。

こんな時、鳥であるボクはどうしてあげたらいいのかな。


「ねえ多呂ちゃん、あんたにこの気持ちがわかる??」


るりちゃんは言った。

確かに、ボクはるりちゃんとは違う。

羽だってあるし、長いシッポだってついてる。

でもね――。るりちゃんは知らないと思うけど。

ボクはいつだってるりちゃんの気持ちをわかってるつもりだよ。


るりちゃんには好きな男の子がいるんだ。

四月から行ってる学校の、大学部とかっていうところにいるらしい。

いつも比呂とウワサしてるんだ。るりちゃんの部屋で遊んでる時よく見かける、机の上の写真。

鳥のボクらから見ればそれほどステキとは思えないけど

るりちゃんは、いつもこの写真を嬉しそうに見てるんだ。


「雅樹先輩…私もあなたと同じ大学部だったら、毎日でも会えるのに」


嬉しそうに見たあとは、いつもこういうふうな言葉がでてくる。

それがこのごろは毎日のことで、とっても哀しい声に聞こえるんだよね。
そこでボクが一声鳴いて、るりちゃんのそばへ行って

小さな目でじっとみる。
するとすぐにるりちゃんはボクに気付いてくれる。

でも、その瞳はかわいそうなくらい切ない色なんだ。


…って、ボクだってかなり人間の気持ちを表現できるようになったけれど

今のるりちゃんのそういう切なくて哀しい気持ち

男の人を好きになった時のココロは。

…鳥のボクには、ちょっぴりむずかしい。

それはたぶん、ボクが男の子だからかもしれないけど、それだけじゃない。

だって、悩みがあってもるりちゃんは何も話してくれないんだ。


そりゃあ、聞き出したい。

だけどボクは、人間たちの言うことがわかっても言葉は使えない。


ああ、どうしてボクは鳥なんだろう。