-‐この人……
……ほんと、意味分かんない。
-‐でも。
「……どこ?」
「……ふえあ??」
「ふえあって…
だから、どこなの?」
「どこって…何が?」
「決まってんじゃん。
あなたの家。」
あたしの言葉を聞いたそいつは、
間抜けな顔で2秒ほど固まってから、
「…ぇ、ええ!?
マジで、お前来てくれんの??」
来てくれんの?
…って…。
むしろ、
あたしが泊めてもらうのですが。
「うん。だから、どこ?
って聞いてんじゃん」
「あ、えっとな…」
あたしの右手首を掴んで、
そいつは歩き出そうとした。
-‐けど、
それをあたしが遮る。
「ねぇ、あのさ……」
「ぇ、あ、なに?」
「名前、教えて?」
一晩泊めてもらうだけでも、
名前くらい、聞いてもいいよね?
「ああ、んなことか…」
言うと、
そいつはあたしの右手首を離して、
あたしと向かい合う体勢になった。
沈黙の中に、
雨音と、
車のクラクションだけが、
響く。
