走り終わって少しして、立花君はまた私のいる観客席まで来た。


下を向いて歩いてくる。

いつもはまっすぐに私を見つめてくるのに。




「…紫乃先輩」


ちょっとしょんぼりしたような声で、抱きついてきた。



まるで甘えているみたいだった。



「お疲れ様」


「……俺、3位だった」


「うん」




立花君は顔を上げて、抱きしめる手を離す。




「かっこいいとこ見せたかった」


「かっこよかったよ」


「ほんと?」


「ほんと」



笑って彼の目を見る。


すると目をそらして、顔を赤くした。