家で上機嫌で準備をしてると…
「姉さん、余計なことしなくていいからね」
「え!?なにが?」
ギクリとしてしまう私に弟はため息をつく。
「で、でも、私だってあんたの姉ちゃんだからさ何かしてあげたかったり…」
弟は黙り込んだ後…
「・・・それなら、デートの日は出来るだけ女らしい格好してほしい」
「え、なんで?」
「それだけでも俺はすっごい救われるんだよ」
それだけいってその場を離れる弟。
私ははじめて弟に頼み事をされた気がする。馬鹿にされたり、命令はあるけど。
私は携帯をとりだし、電話をかける。
「もしもし高橋くん
今度の日曜日、私がとてつもなく女らしい格好しても引かないでくれる?」
『度合いによる』
・・・・。
「今日、はじめて弟にお願いされたんだよ。日曜日は出来る限り女らしい格好してほしいって」
『そっか、ふふ、聞いてやれよ』
電話口で高橋くんは、なにかを察したように笑う。
「いつも私には嫌がらせとか、命令口調のくせにさ、最近はちょっと素直なんだよ」
『あかりちゃんのお陰かな』
あかりのお陰。
「でも、また私の友達に嫌がらせする魂胆かもしれないし…でも本当に好きなのかもしれないし…」
『馬鹿。唯がそんなこと考えても本当のことなんか本人にしか分からないだろ。それに…
はじめくんは、本当に唯が嫌がることしてるの?』
どういうことか聞く前に、高橋くんは用事で電話を切ってしまった。