「それで、あかりがね…」

最近、姉はあの女の話ばかりをする。

「あんた、あの女しか友達いないわけ?」

「誰かさんのおかげ様でな。あとあの女って呼ぶな」

「あかり…………さん」

姉が鬼の形相で睨んできたので咄嗟にあの女に敬意をはらう。

あの女はあかりという名前で、姉と同じ高校だった。同じ高校なら、目立っていた姉のことくらい分かりそうだが…男という先入観から気付かなかったようだ。

「阿保か…」

僕はぼそっと呟く。

なんだか僕は最近苛々してしょうがない。

姉があかりの話をするたびにモヤモヤと気分が悪くなるのだ。

「あかり…さんは、どんな人なの」

僕が聞くと、姉は疑いの眼差しで見てくる。

「なに………またあんたは私の友達に何かしようと…?」

「別に」

「あんた、高校に来たら、私の弟ってこと秘密にしろよ!その髪型もやめろ」

姉が騒ぐのを無視して部屋に入る。

4月から僕は姉と同じ高校に入学する。

あかり、さんとも同じ高校に。

僕はモヤモヤとしたまま春を迎えたのだ。