「俺、引っ越すんだ。」


「今度は引っ越しジョークかよ。」


「違う。これは違うんだ。真面目に聞け。」


将輝の真剣な表情から、その深刻さが分かった。


習字の時間、半紙に1画目を入れる時の、緊張。

そんな顔だった。


「え?でも近くだろ。どこだよ。」



「違う。日本ではあるけどすごい遠い場所らしい。」


「え?嘘だろ……」


「本当なんだ。」



「………じゃあ、その、もう会えなくなるとかそういうやつ?……じゃない……よな?」




「そういうことだ。」





落ち着け。落ち着け。



どうせ将輝のことだ。そんなに重大なことじゃないだろう。




どうせこんなに真剣になっても、後で冗談だと言ってくれる。


そうだ、そうだ、きっと。きっとそう───


「頼むから信じろ。本当のことだ。」


俺は、妙に重い俺の中の、何かを感じた。




これはきっと、この熱すぎる太陽のせいだ。



だからきっと、体重く感じるだけ。




「悟!!」



でも、将輝の目は、真剣そのもの。









「本当に、本当なんだ。」





信じられなかった。