「そこは察しろって。黒歴史だぞ?」
「うーん…、女遊びが激しかったか超ヤンキーだったとか?」
今の誠実そうな先生からは、予想もできないことなんだろうな。
黒歴史って言うくらいだし。
「まぁ、そんなとこだな。誰にも言うなよ?」
「えー、どうして?」
「どうして、って。あたりまえだろ、教師が元ヤンキーでしたーとか知ったら
勉強する気なくなるだろ?」
「ふーん、なら先生はやっぱりヤンキーだったんだ」
「そ、そうとは言ってねえだろ…」
先生は、意外と単純。あたしが揚げ足が取るのをちゃんと真面目に答えてくれる。
それが面白くて、あたしは隣で爆笑してる。
「じゃあ先生がヤンキーだった話は秘密にするから
今日あたしに数学教えてくれたこと、小太りじいさんに言わないでくれる?」
「交換条件か?」
「そういうこと!」
べつに、交換条件なんて無くても誰かにいうつもりは無い。
だけど、先生との"秘密"がほしかった。こんなこと思うのは初めてだった。
「わかった、約束するよ。その代わり工藤も言うなよ?」
「うん、絶対言わない!」
『約束!』と、水瀬先生と指切りを交わした。
それが嬉しくって、あたしは笑顔で微笑んだ。

