先生は、あたしに向かって缶のミルクティーを投げた。
そして、ゆっくりと歩いてあたしの隣に並んだ。
「頑張ってたから、お疲れさまってことで」
「いいんですか?」
「もう買っちゃったし、気にせず飲め」
「ありがとうございます…」
本当なら、あたしがお礼すべきなのに…。
教えてもらった上に、ジュースまでもらって。
「松岡先生、どんな顔してた?」
「あたしの予想通り悔しそうな顔してました」
「そうか、よかったな」
先生は、あたしの頭をそっと撫でてくれた。
普通なら、同じ教師として注意するべき発言なのに、そんな気はなさそう。
水瀬先生は、ほかの先生たちとは何か違う。年が近いから?
いや、そんなことじゃない。きっと気持ちの面でのこと。
「先生は、どんな高校生だったんですか?」
「いやいや、言えねえよ。高校時代は黒歴史」
「黒歴史?逆に気になる!」
黒歴史なんて言われたら、余計気になる。
いろいろ想像しちゃうし。

