「まぁそれでもやるしかないな。まずは1枚目から」
「は、はい!」
水瀬先生は、教えるのがすごく上手だった。
手が止まる問題を見て、苦手なところを見つけてくれて特訓してくれた。
即興で似てる問題を作って何問も解いた。
本当は、数学の先生なんじゃないかってくらいわかりやすい。
小太りじいさんみたいに、上から目線じゃないし、問いかけてくれる話し方。
聞いてても嫌な気持ちにも、諦める気持ちにもならなかった。
サーッ。
「あっ!」
窓から風が吹いてプリントが飛びそうになった。
あたしは思わず、手を伸ばしてプリントをキャッチした。
「取れた!」
そう言って、目線を先生のほうへ向けると先生の顔がまじかにあった。
あと1、2cmくらいで顔がくっつきそうなくらい近い。
でも…、その綺麗な顔から目が離せなくてあたしたちは少し間見つめ合う。
「早くやるぞ」
パチンッ。
「えっ…地味に痛い!」
少しして、先生があたしのおでこにデコピンをした。

