午前九時四十二分。第三基地に突撃命令が下された。俺は突撃の準備を整え、倉庫に向かう。地下に在る基地から戦場に向かうには、部屋全体がエレベーターとなっているこの場所を使う必要が在る。
「……随分と減ったな」
 自然と、俺はそう呟いていた。
一か月前、倉庫を埋め尽くしていた兵士達は、三分の一ほどに減っていた。多くは戦死し、そうでないものは逃げ出した。
 それも、この戦況では仕方ないだろう。敵は日々増え続け、戦力は徒に減って行く。
 俺はちらりと倉庫の入り口を見遣る。ふらつきながら最後に入って来たのは、クィーザだ。皺になった白衣を伸ばし、クィーザは俺と目が合うと控えめに笑う。
「遅いぞ、クィーザ」
「すいません。それじゃあ新兵器の説明をしますね」
 クィーザはぱたぱたと壇上に上がって来た。そして、何度目か分からない説明を繰り返す。
 いや、こいつにしたら全て初めてことなんだろう。
「つまり、この兵器は強烈なエネルギーを凝縮したレーザーを中心に構成されていまして……アストロさん、聞いてますか?」
「あ? あ、ああ、聞いてる」
 嘘だけどな。いや、聞いてるんだよ、もう三十九回目だ。
 何がどう間違ったのか、それとも全て俺の悪夢に過ぎないのか――――俺は、『今日』を延々と繰り返していた。
 突撃し、戦死する。それをもう三十八回繰り返した。そして気付けば俺は兵舎のベッドに居る。
「説明は以上です。何か、質問はございますか?」
 そう言って一同を見回したクィーザが、最後に俺を見る。それも、やはりいつも通りだ。
「無いようでは、それでは」
 一礼してクィーザが壇上から降り、俺は改めて一同を見回す。
「さあ、出撃だ!」
 そう叫んで、俺は銃を掲げた。