第三基地に、警報が鳴り響く。黒い牛革ブーツでコンクリートの床を鳴らしながら、基地局長である、アストロ・ヴァンデラーは苛々と歩いていた。髪は短く刈り込んだ黒で、狼のような鋭い顔つきが特徴的だ。青い軍服にベレー帽を頭に乗せ、腰には拳銃のホルスターとマガジンが入れられたポーチを吊るしている。
 戦況は思わしくない。ここは人類の防錆線でもあるというのに、戦力が芳しくない状況だ。敵の圧倒的な戦力に怖気づいた兵士達が、次々と逃げ出してもいる。
 だが、アストロを悩ませているのはまた別のことであった。
「アストロさん」
 ひょこっ、と、廊下の角から顔を出してそう呼び掛けたのは、クィーザ・ゲッティン。ぱりっとしたシャツとスラックスに白衣を着ており、中性的な顔立ちにふち無し眼鏡が良く似合う。髪は肩口で切り揃えられ、茶色と黒の混ざった不思議なまだら模様であった。
「ああ、クィーザか。新型銃の話だろう」
「ええ、新型の銃が朝方出来まして。試し撃ちを……どうして、知っているんですか?」
 クィーザはきょとんとして目を瞬かせた。アストロは一瞬苦い顔になる。
「何でも無い。試し撃ちをして暴発しなかったら即登用する」
「了解しました」
 クィーザはぺこりと頭を下げて去って行く。アストロは額に手を遣った。
「……これで、三十九回目、か」