とても、勇気のいる言動だと思う。
それはこの民族だから、その気質もあるかもしれない。
女の子を突き飛ばしたのは、女の子が気にしていたクラスメイトだった。
初めてだったろう。
あんな、敵意のある攻撃を受けたのは。
周りは優しかった。
彼女の為を思う者が殆どだったから。
そこに身体以上に心を突き刺すような感情が、女の子を攻撃した。
胸中に感じていたのは発作ではなく、その得体の知れなさにある。
今まで触れてこなかった、新しい感情だ。
……子供の心はとても敏感だ。
大人が思う以上に、本当に色々なことから感情や思いを芽生えさせる。
日常生活における様々な自然・人との接触が針のような刺激となり、子供の心をつつく。
そんな風に、子供は知らない何かにつつかれると、心はつつかれてやっと感じ取った何かを得ようとする。
つつかれるのはいつも唐突なことで、いきなりのことで戸惑い、子供はすぐに心が制御出来なくなる。
赤ん坊がささいなことで泣きわめいたり、好きな子をいじめたくなってしまうのは典型といえる。
そうやってつつかれ、つつかれ、子供の心はそうして芽生えた何かを育てていける。
逆につつかれ足りないと、それに対して奥手になったりなかなか強くなれないよね。
時流れて心身共に育ち、つつかれること自体に慣れていくことで、常に落ち着いて心を制御出来るようになる。
それが大人になっていく、ということだ。
今回はその針が大きすぎた、まるで槍のようだ。
得体の知れない感情は、まだ女の子には受け止めるに早かった。
本当に怖かったろう。
それでも勇気を出して立ち向かった。
なかなか出来ることじゃない、私はそう思う。
ただ、女の子が理由を尋ねた時、クラスは既に異様な何かに包まれていた。
歪みに気づけなかった。