かわいい



その時だった。

「あれ?先輩が1年に何の用っすか?」


背後から男の子特有の低い声が聞こえてきたのは。


ビクッと体が震えて、私は恐る恐る振り返る。


そこには、髪の毛をワックスで固めてツンツンと立たせている、両耳にはピアスをつけた、いわゆるヤンキー3人組がニヤニヤしながら立っていた。



(無理!無理!この状況…!!)


私はすぐさま瑞樹の後ろに隠れた。

瑞樹はめんどくさそうに、彼らを見つめながら
「あぁ〜まぁちょっと探してる人いてさ。」と言いながら立ち去ろうとした。


しかし、彼らは簡単には逃がしてくれなかった。


「俺らも一緒に探しますよぉ〜。」

ギャハハという下品な笑い声をあげながら、私達を囲みはじめる彼ら。


私達はこういう現場によく居合してしまう。
よくあることだが、やっぱり怖い。
瑞樹はこういったことに慣れてるからなのか落ち着いているが、実際はどうなんだろう。

「つか、あれっすよね?犬村瑞樹さんと猫山ハツカさんっすよね?」


「え!?噂の?やべー!」


待って待って待って
瑞樹はまだしも、何故私の名前まで!?


怖い怖い怖い。


「先輩たち、暇だったら今から遊びに行きません?」


「私達を誘うなんて100年早いよ。はい。おしまい。またね。」


瑞樹はそう言って私の肩を掴んで歩き出そうとした。


「えー待って待って。マジでこれ逃したら無理だから。」


しかし、目の前に立ちはだかるヤンキー達。
瑞樹にしがみ付いている手から汗が吹き出してきた。