かわいい



「着いた…無理…もうだめ。」


「もう、後戻りできないよハツカ。」



北校舎に着いてしまった私達。

私の心臓は、もう破裂寸前である。
心臓の鼓動が身体中を巡って、音になって頭に響いている。


北校舎は騒がしかった。


今から家に帰るであろう1年生。
今から部活です感満載の1年生。
いかにもヤンキーになりたい感丸出しの1年生。

教室の外に出て、あらゆる方向へと一斉に歩いていく。


私達はその間にポツンと佇んでいた。



(1年生、こ、こ、こぇえええ!!!)



眉を八の字にしながら、瑞樹を見つめれば、彼女は二重の目をパチクリさせてニヤニヤ。


「なに笑ってんのよぉ。私達がここに居るの違和感でしかないよ。」



先程から、1年生からの視線が痛い。
新参者が何しに来たんだと言わんばかりの目である。



「やっぱ、皆ハツカのこと見てるよぉ〜。かわいいから。」


瑞樹がいつも決まって言う台詞だ。

確かに目は合うが、それは私がかわいいと思って見ている目ではない!
不審な人を見る目だ…。

私から見れば、見られているのは瑞樹の方である。
女の子らしいショートボブに、小柄な体型。小さい顔にぱっちり二重。笑った顔は天使みたいだ。


「瑞樹、あんまり見ないで。」


この子に見つめられると、変にドキドキしてしまう。


「うふふ。」


瑞樹は悪戯っ子のように笑いながら、私の手首を掴み、引っ張った。



「…ちょ!」


慌てて私も彼女についていく。


「ハツカの王子様!探しに行くよ!」


その言葉を聞いて、私の顔はお湯が沸騰するかのように一気に熱くなった。