「おい、いい加減起きろ。次の授業移動だぞ」





やや乱暴に肩を揺すられ、あたしは、たゆたうような眠りから無理矢理現実に引き戻される。




目が覚めても未だ意識は心地よいまどろみの中だ。




枕代わりにしていた両腕からのろのろと顔を上げる。




ぼんやりとした視界に映った誰かが、呆れたようなため息をこぼしたのが何となくわかった。




まぶたが重い。




再び閉じてしまおうか、そう思ったところで前髪を掻き揚げられ、おでこを指で弾かれる。





「――痛ッ!」


「なにぐーすか寝てんだ、バカめ」





そのからかうような、小バカにするような声音に、あたしの身体が敏感に反応して。




熱を持った心臓。


早まる鼓動。




あたしはくしゃくしゃになった前髪をしきりに触り、亮太から視線を逸らした。




前髪を整えて手の影から目線をあげると、ちょうど、ニヤニヤと笑っていたヤツと目が合った。