今だって、そうだ。





「俺、実は好きな子がいるんだ」




そう言って笑った亮太は、今まで見てきたどの亮太よりもカッコよくて、きらきら輝いていた。




――不覚にもときめいてしまうくらいに。




目に痛いくらいのまぶしさを放つそれに、理解が遅れた。




……今、リョータ何て言った?



好きな子が、いる?




その時あたしは、本当に、一瞬、時が止まったような気がした。




すぐ下を通り過ぎていった市電の音で我に返る。




心臓がどくんと大きく脈打つ。




亮太の髪が、制服が、風に揺れていた。





「だから、緒川にいろいろと協力して欲しくって」





ポリポリと、右頬を人差し指で掻きながら、すまなさそうにこちらの顔を窺う亮太。




亮太の癖だ。あたしは知ってる。




人に、頼み事をするときの癖。








……友達だと、思ってた。




異性間でも友情は成り立つって、――それがあたし達なんだって。




でも、違った。




無性に悔しかった。



こんなにもヤツについて分かってしまう自分が、友達以上に亮太を――亮太を、ずっと見ていたのだと、こんなにも好きだったのだと、改めて気付かされて。




あたしの気持ちは、とっくの昔に恋だったのだ。
 






けれど、あたしの気持ちは決して報われない。

 


それなら知りたくなんて、なかった。








「だめかな?」





恐る恐る、といった体の声音に、ぽんと出そうになった言葉は一体何だっただろうか。




でも、それはすぐに唾と一緒に飲み込まれて体内に落ちていく。