気が付いたら五百年後にいた。

 何を言っているか分からないだろう。俺も訳が分からない。確かなのは一つ、俺は死んだはずだったのに、まだこうして生きているということだ。
 椎木蒼葉(しいのきあおば)と名を変えて、どういうわけか、過去の記憶を持ったまま、生きている。
 前世のことは思い出せる。だが不思議と、死んだその日のことは思い出せそうになかった。俺は、現代じゃあ役に立たない過去の知識を持って、のんべんだらりと過ごしていた。

 ーーーーあの女が、俺の前に来るまでは。