孤独な王子様

今日は夏の雪が降るのかもしれません。



なんと昨日は丸一日、王子様は自殺のことを頭から切り離していたのですから。



ベッドに座り、気難しい顔をしています。



きっとあの親子のことを思い出しているのでしょう。



どちらも思いやりのある人間。



少なくとも覚えている内で、自分に笑顔を向けてくれた人物はあの二人が初めてです。



それで気になって仕方がないのでしょう。



蜘蛛嫌いな看護婦が、王子様に昼食を与えに部屋に入ってきました。



彼女も彼の僅かな変化に気づいたのか、あら、と声をあげます。



「何かいつもと違うわね。何かあったの?」



王子様はさぁね、と答えます。



「気味が悪いわね。」



看護婦は口の端を歪めました。



そして、昼食をベッドの机に置いて部屋から出ていきました。



王子様は呆然として、本能的に匙を手にしていることにさえ気づきませんでした。



口の中に食べ物を運び、うっと呻きます。



食べ物の中には薬。



いつも処方されているカプセルが見えます。



王子様はトイレに直行。



口の中のものを吐き出しました。



イライラした様子で『最悪』と呟き



外にいるであろう看護婦に向かって叫びました。



「毒を入れろっていってただろ‼」


前言撤回。


やはり今日は真夏の炎天下です。