「芽衣ー、飯だぞー」


目が覚めると、咲輝の声が聞こえる。

夢…?





「なにぼけーっとしてんだよ。俺、腹減ってんだけど?早く起きろ。ばーか」  





いたっ…。

デコピンが痛いんだよ…咲輝は…。

優しくしてよ!

痛いってことは、夢じゃない…?

 






「ちょ、マジで起きねーと襲うよ?」




…。



【バサッ】



掛かっていた布団を一気にはぐ。

夢じゃ…ない!!






「やっと起きたよ、おせー」

「で、出て行って!……あたし、ご飯食べない…」

「はあ?」


咲輝は、あたしにまたデコピンした。


「せっかく作ってくれたんだから、ちゃんと食え。」

「…」


咲輝は、感謝の気持ちとか、全然気にしてないように見えて、大事にする。

いつも、そーいうところすごいって思う。
 

でも、今日は…。



「ほ、ほんとにいらない…食べられない」

「なんで?」



は、はやい…。


「…ん?泣いてた?目が腫れてる。どーした?」


「…?!」


さすが…。

あんなに周りに女の子がいたら、そんな小さな変化にも気づけるようになるのね…。

いや…気づけるからモテるんだ…。



「なんかされた?俺に隠し事なんて、いい度胸だなー?」



…それは咲輝じゃん。

あたしに、秘密にしてることあるの知ってるよ?

お願い。

言ってよ。


あたしに聞かせないで…。



「ほら、言えって。芽衣のことなら、分かんだぞ〜全部」



…また、そーやって…。

あたしを大切に扱うフリをする。

前までは、嬉しかったよ…!

なのに今は…嫌だ。

すっごい嫌だ…。



「おい…め」

「咲輝のせいじゃん!!!」



気がつけば、あたしは叫んでた。



「咲輝があたしに嘘ばっかりつくからじゃん!…あたし、自分がどんどん嫌いになってくよ…。」



こんなときでさえ、可愛くないあたし。

泣き方だって、全然可愛くないし。

でも、止まらない。


「あたし見たよ?!先輩と付き合ってるんでしょ?だったら、ちゃんと言ってよ!幼馴染じゃん…。」


涙で、咲輝の表情が見えない。

どんな顔してるのかわかんないのが、逆によかった。

言ってて、後悔したくない。