あたしは、家について、すぐに部屋に向かった。
咲輝がいなくてよかった…。
いつもは嬉しいのに、今日はほっとした。
…それにしても…。
美香に気を使われるなんて…あたし、どんなひどい顔してたんだろ…。
嫉妬とか、衝撃ですっごい複雑な顔してたんだろうな…。
タイプじゃないんじゃなかったの…?
喜んだあたしが馬鹿みたいじゃん…。
幼馴染のあたしに嘘つくの?
こんなふうに、勝手に自惚れてた自分じゃなくて、咲輝を責めてしまう自分が嫌い。
こんなんじゃ、咲輝があたしのことなんて好きになるはずないのに…。
美香に言われて、調子に乗ってた。
咲輝のこと1番知ってるのは、あたしだって。
咲輝に1番女子もあたしだって。
恥ずかしいや…。
可愛くて、性格もいい先輩には勝てないよ…。
まず同じリングにも立ててない。
わかってるよ?
そんなの。
それでも…。
それでも……。
咲輝だけが、あたしの自慢だったの。
咲輝の幼馴染っていう立場だけが。
あ、また頭が痛い…。
咲輝のことを考えると、ずしっとおもりがのったような感覚になる。
この痛みが、咲輝への気持ちの大きさをあたしに痛感させる。
あたしって、こんなに恋する乙女だったんだっ…。
ははっ…。
涙がどんどん出てくるのに、咲輝の声が頭の中で何回もあたしを呼んでて…。
「もうっ…バカッ…咲輝のバカっ…」
笑いながら、そうつぶやいてた。