「先輩…、なんで俺に話しかけなかったわけ?」
「え?…あ!さっきね!だって、みんなにはバレないようにしたい…から…」
「なんで?俺は、付き合ってるって言いふらしたいけど?」
咲輝があたしに見せたことのない顔を見せているのは、あの由宇先輩だった。
「……もう!なんでなんでうるさいよっ!!そんなこと言うなら、わ、別れる…」
「やだ」
即答…。
「うっそ…あれって超可愛くて有名な先輩じゃん…!あれ?でも…咲輝って、年上はあんまり好きじゃなかったよね?」
「…」
驚きで、声が出ない。
口が乾いていく。
「さきちゃんだってさ、女の子といちゃいちゃしてた…」
「先輩だって、太郎ちゃんと喋ってたじゃん?」
「…?!あれは…喋りかけられたんだから、喋るでしょ…?!」
「じゃあ、喋んないで。もう俺以外の奴としゃべるの禁止。」
「なにそれっ…やだよ…」
なんか…頭が痛い。
体もだるいし。
…なんでだろう…?
熱でもあるのかな…?
「…ぃ……ぃ!…芽衣!」
っ!
気がつくと、美香が心配そうにこっちを見ていた。
「大丈夫?!」
「…あれ…?…あの二人は…?!」
「さっき帰ったよ?!…二人が帰ったのに、芽衣が固まってるから、びっくりしちゃったよ…」
「ごっ、ごめん…」
そーだったんだ…。
そっか…あたし、苦しくなって…。
「…芽衣…ちゃんと聞いてみたら…?」
「…え?」
美香があたしを真っ直ぐに見る。
「本当に二人が付き合ってるのかまだ分からないじゃん。本人に確かめなよ」
…美香…。
でも…怖いよ。
本人から直接聞くなんて…。
「とりあえず、帰るよ」
帰り道、あたしは何も喋れなかった。