「累くん、立って?」

手を引っ張って立ち上がらせようとすると、累くんは素直に従った。

「嫌いだ。あんな男……。石崎さんに愛されて……」

先輩に対して呪いの言葉を吐けば吐くほどは、私に対する愛情を感じるから不思議だ。

どうやら、累くんと接している内に私もおかしな方向に歪んでしまったらしい。

「ラブレター……。破いたの……累くんじゃないんでしょう?どうして嘘をついたの?」

真実を知ってしまったことを告げると、彼は素っ気なく顔を横に向けた。

「石崎さんの傍にいる理由が必要だったんだ。何でも良かったんだ。石崎さんの気が引ければ」

彼は本当に無実だったのだ。

勝手に誤解して累くんを責めた私を更に庇うために、つかなくてもいい嘘をつき続けてくれていたのだ。