その日は累くんのことが何となく気になって、仕事に集中できなかった。

最低限の仕事を済ませて、今日は真っ直ぐ帰宅することにする。

累くんが入社してから初めてひとりきりで家路に着く。

(やっぱり私が悪かったのかな……)

プロポーズには並大抵の努力と決断力が必要だということは理解している。

あっさり大嫌いと言い返したのはやはりまずかったのだろうか。

自責の念を抱きながらポストを開けると、コロンと何かが転がり落ちて慌てて拾う。

「これ……」

先日受け取ることを拒絶したリングケースだった。

……いらないって言ったのに。

(返さなきゃ……)

要らないと言った理由も考えずにまた好意を押し付けるつもりだと思うとふつふつと怒りが湧いてくる。