「……知ってるよ。これは罰なんだってね」

累くんは私が怯えているとみると、そっと指を離した。

「僕の気持ちを知りながら一向に応えてくれないのは、まだ手紙のことを許していないからだろう?」

累くんは本当に、本当に悲しそうに目を伏せた。

「る、い、くん……?」

「君が与える罰なら僕は甘んじて受けるつもりだ。でもね。そろそろ終わりにしようと思うんだ。石崎さんが望むような“ただの友達”でいるのも」

……人は良い意味でも悪い意味でも成長する。

「石崎さんに時間をあげる」

累くんは5年前のあの日のように、目を細めて悪魔のように歪んだ笑みを浮かべた。

……樹里の言うように勘違いしていたのは私の方だった。

「次に会う時は君に相応しい男になって帰ってくるから、その時は……」

彼は吐息をたっぷりと含ませ、私の耳元で囁いた。

「……奪うよ。何もかも」

累くんは最初から私のことを“女”として欲しがっていた。

泣きじゃくるしか訴える手段を知らなかった子供は、自分の手で望む物を掴み取れるほどに逞しくなっていた。