「僕の家なら近所だし、部屋も余ってるから気兼ねなく過ごせる。もちろん不埒なことはしないから!!」

「でも……」

いくら付き合いが長くても、男性の部屋に泊まるのはさすがに抵抗がある。

断られる気配を察知したのか、累くんはダメ押しのように瞳を潤ませて訴える。

「僕はただ……怖い目にあったばかりの石崎さんが心配なんだよ」

累くんの言う通りだ。

紙一重で悲劇を免れたこんな夜をひとりで過ごすのは確かに心細い。

「本当に……何もしない?」

「うん。約束する」

自ら悪魔の住処に乗り込むのは少し怖い。

しかし、その時の私は度重なる心労で疲れきっていた。

「じゃあ、お願いしてもいい?」

「やったー!!」

深夜にも関わらず累くんは万歳をしながら喜びの雄叫びを上げた。

当初は一晩だけのつもりだった。

……彼の交渉術を甘くみていたのは私の方。

両親をどうやって説得したのかは分からないが、翌朝には次に住む部屋が決まるまでルームシェアをするという話にまとまっていたのだった。