「何これ……」

アルバイトを終え自室に帰ると、部屋の中は見るも無残に荒らされていた。

窓ガラスは割られ、クローゼットの中の引き出しという引き出しが開けっ放しにされている。

大学生になり親元を離れ一人暮らしを始めてから1年以上経つが、初めて訪れる緊急事態である。

「通帳っ……!!」

金目の物はほとんどない学生の一人暮らしで、唯一の貴重品は通帳と印鑑だけだ。

私は荒らされた部屋の中に踏み入ると、チェストにしまっていた通帳を探した。

しかし、いくら探しても見つからない。

……空き巣だ。

犯罪に巻き込まれたという事実と他人に持ち物を荒らされたという恐怖心から身体がガタガタと震え、その場で途方に暮れてしまう。

(誰か……)

助けを求めようとバッグから携帯を取り出した時、真っ先に脳裏に浮かんだのはいつも邪険に扱っていた彼だったのは皮肉なことだ。