「待ってっ!!」

累くんは直ぐに追いついて、私の腕を引き留めるように掴んだ。ヒールのある靴で走り出しても対した速度は出ない。張り切ってオシャレしたのが裏目に出た。

「指輪が気に入らなかったなら他の物を……」

「そういう問題じゃないの……」

私はゆっくり首を横に振った。

「考える時間はたっぷりあげたはずだ。5年前の別れの日に、“奪う”と言ったのを忘れたの?」

「累くんは中学生の頃からちっとも変わっていないのね……。いつも私の気持ちなんてお構いなし。ラブレターのことだってそう!!黙って留学したのだってそう!!自分さえ良ければそれでいいの!?」

累くんの気持ちはいつも同じ、真っ直ぐ私へと向いているが、彼が私の気持ちを顧みることはない。

あのプロポーズはその最たるものだった。