「石崎さんは僕の全てだよ」

同じ高校に進学した私達の仲は入学と同時に広く知られることになり、私には近づく男性は問答無用で明石累の“虫除け”と称した被害に遭うこととなった。

「邪魔する奴はみーんな敵だ」

累くんは他者への敵意を公言してはばからない。

人並みの学校生活は早々に諦めた。

一見したところ爽やか風イケメンである彼の、どこに残虐性が潜んでいるのだろうか。恐ろしい限りだ。

残念なことに私への情熱は冷めることなく、おかげで高校3年間は随分と肩身の狭い思いをした。

もちろん大学も同じところに進学すると言い張ったが、さすがに女子大は受験できなかったらしい。

その代りに隣の駅にある私大に進学することとなった。

立地のみを考慮した進路に、成績優秀な彼に期待していた先生方はそろって肩を落としたという。

それほどまでに私に執着していた彼がどうして日本を離れ、留学を決意するに至ったのか。

今となっては大きな謎となっている。