ただの友人であった頃とは比べ物にならないほどの束縛と嫉妬も、傍から見れば仲の良いカップルの痴話喧嘩としか認識されない。

しかし、その内実は恐ろしく歪んでいた。

私は累くんを許したわけではなかったし、累くんは私に憎まれることで傍にいる権利を得たのだ。

彼は笑う。悪魔のように。

彼は誘う。こちら側に堕ちてこいと。

累くんは他人に厳しい反面、私のことはドロドロに甘やかした。

部活の後の差し入れも、受験勉強の面倒も、発表会の後の拍手だって自ら進んで行ってくれた。

累くんの掌の上でころころと転がされながら、ダメ人間になるものかと決死の抵抗をみせてきたわけだが。

中学校を卒業してからも彼の理不尽な好意は引き続き私を悩ませ続けることになる。