(やだな……)

……ふたつに破られたラブレターを見てもまだ諦めきれないなんて。

「石崎さん!!」

明石くんは廊下をトボトボと歩いていた私を呼び止めたかと思うと、こちらに走り寄って来た。

「今度はさ、教室で話しかけていい?」

もしかしたら、明石くんは気づいていたのかもしれない。

「うん」

……答える声はもう一度泣き出してしまいそうなほど震えていたことに。

この出来事をきっかけに明石くん……累くんと少しずつ教室でも言葉を交わすようになった。

趣味の話、部活の話、最近読んだ本のこと。

話し上手とは言えない私のとりとめもない話を彼は嫌がらずに良く聞いてくれた。

クラスでも大人しいグループにいた私にとって、男友達という存在が出来たのは初めてのことだった。

まあ、きっかけが失恋っていうのもおかしな話だけど。