「石崎さん……」

「明石くん……?」

放課後、誰もいない空き教室で待ち人の訪れを願っていた私は、突然現れた明石くんを見て戸惑いを隠せなかった。

彼とはクラスこそ一緒だったが、これまでほとんど話したこともなかった。つまりはほぼ他人である。

「ごめんね。ゴミ箱に捨ててあったんだけど中身が見えちゃって……。僕、放っておけなくて……」

「それ……!!」

明石くんがおずおずと渡してきたのは、水色の封筒だった。私が今朝、先輩の靴箱に確かに入れたラブレターである。

……ただし、それは無残にも真っ二つに破られていた。

(う……そ……)

私は震える手で明石くんから封筒を受け取った。

所属する吹奏楽部の先輩への想いをこめた手紙は、昨夜徹夜で書いたものだった。

気持ちを伝える方法は手紙以外にもあったが、とてもじゃないけど敷居が高くて。

それでも、数ヵ月後に迫った先輩の卒業までに気持ちを伝えなきゃという焦りから、なけなしの勇気を振り絞ったのだ。

最初から読まれずに捨てられることだって覚悟していたのに、いざその状況に立たされると悲しさがこみあげてくる。