「う、うん、そうだね」
同意して、爽太郎を支えながら林道を出た。
国道に戻ってきたとたん、熱気と陽射しが容赦なく身体を包む。
うんざりするような暑さに、けれど朱音は何故かホッとした。
生きている者の世界に戻ってきた、そんな気がした。
「そうちゃん、駅まで歩けそう?」
「だ、だいじょぶ、おさまってきたから……」
「歩けないって言われても歩いてもらうしかないけどね」
たしかに、いくら爽太郎がひょろりとしていても、これだけ背丈のある男子を朱音やアユが背負って歩くのはムリだろう。
小学生くらいの体格だったならともかく……。
(小学生……そうだ、さっきの子)
朱音は林道を振り返った。
薄暗い林道、カーブして森の奥へ消えていくゆるい坂道。
もうカーブの先へ歩いて行ったのか、見える範囲に少女の姿はなかった。
「ねえアユちゃん、さっき歩いていた女の子いたでしょ?こんな山に一人で入って大丈夫なのかな」
朱音が心配になって口にすると、アユは「女の子?」ときょとんとした顔をした。
あの少女が横を通り過ぎるのに気付かなかったらしい。
「こんなとこ一人で歩くってことは、地元の子なんでしょ。大丈夫だよ」
「そうか、そうだね……」
アユの言葉に納得はしたが、どうにも引っ掛かりが消えずに、朱音はもう一度林道を振り返って眺めた。
山の奥へ続く、誰もいない道。
(緑色のブレスレット……)
まぶたに緑色がちらつくと同時に、再びももの横に熱を感じた気がして、制服のスカートの上からその場所に手を触れる。
そこには、ポケットに押し込んだままの小箱があった。


