最後の願いが叶うまで

古くても頑丈に作られているらしく、祠自体が崩れる気配がないことが救いだ、とその造りを観察していた朱音たちは、両脇の柱に蝶番がついていることに気づいた。

しかし、祠に扉は付いていない。

壊れて落ちたのか、と思わず下の地面を覗き込むと、さすがに扉はなかったものの、ぼうぼうに生えた雑草の中にお皿や花瓶、ガラスのカップなどが埋もれるように散乱しているのが見て取れた。
祠の中にお供え物をするために置かれていたものが、激しい雨風に煽られでもして落ちてしまったのだろう。

「何か光ってるね……ガラスの破片?」

「これって……ビー玉じゃない?金平さんの知り合いの人、ここの神様はキラキラしたものが好きだって、言ってたんでしょ」

確かに、雑草の中でわずかな光を反射して光っているのはビー玉のようだった。
光りものが好きだというこの祠の主に、誰かが供えたものに違いない。
ただ、丸い原型をとどめているものは何個もなく、ほとんどは砕け、破片状になって散らばっている。


『ある時、昨日お供えしたばかりのビー玉がぜんぶ粉々に割れてたんだって。それから何度新しいビー玉を供えても、次の日にはいつもぜんぶ割れてしまうようになったんだって―――』


アユが語った噂の内容を思い出し、3人はそれぞれに顔を見合わせた。
ゾッとした表情のアユが、ヒトダマは飛んでないよね、と周囲を見回す。

「あ、そうだアユちゃん、写真撮らないと」

「えーどうしよう、変なもの写りそうで怖いなー」

「いや、先に願掛けしてからのほうがいいでしょ、手順的に」

爽太郎に言われ、それもそうだとみんなして祠に向き直る。

「縁結びの願掛け、だよね。よし。……えーと、手を合わせればいいの?」

「えっと、神様だから、二回お辞儀して、二回手を打って……」

爽太郎の踏む手順を、女子2人も真似していく。

朱音も祠の中の小さな鈴を鳴らし、お辞儀をしてから柏手を打って、願い事をするために目を閉じた。