最後の願いが叶うまで


「じゃあ、行こう」

アユを先頭に、3人は林の中の小道に足を踏み入れた。
ちょうど人1人が通れる程度の道を、一列になって進めば、すぐに開けた場所に出た。

生い茂る木々をそこだけくり抜いたような、半径三メートルほどのぽっかりとした空間。

頭上は四方から伸びる枝で塞がれているため先ほどまでの林道と同様に薄暗い。
地面からは、制服のスカートから出た膝のあたりをくすぐるほどに、雑草が伸び放題に伸びている。
この場所の管理をする人間が今はいない、と老人が言っていたのは本当のようだった。

そして、この空間の中央、小道から入ってきた朱音たちを正面から待ち受けるようにして、その祠はあった。


「これが、朧月稲荷の祠……」


苔むした石積みの台座の上に、色あせた朱塗りの祠が鎮座していた。

一時は有名だったというからそれなりにりっぱなものではないかという朱音たちの予想を裏切って、大人の男性が2人で腕を回せばそれでおさまってしまいそうな、小ぢんまりとした建物だった。

周辺に祠の名前を書いたものなどは何もない。
けれどこれが稲荷の祠だと分かるのは、祠の内側に置かれた小さな鳥居と、その向こうに並ぶ二匹の狐の存在があるからだった。

陶器でできた小さな白狐たちの向こう、祠の一番奥には、これもミニチュアサイズの、お堂のような置物が見える。
この中に、神様が祀られているのだろうか。

「なんか、すごく雨風にさらされながら耐えてきましたって感じだね……」

アユが、気味が悪いの半分、気の毒なのが半分といった様子で感想を述べる。

屋根の下から渡されたしめ縄はヨレヨレにやせ細ってちぎれる寸前だし、その下に吊るされている小さな鈴についたヒモも、完全にボロきれ状態だ。

木組みの祠の朱塗りはおそらくずいぶん長い間塗り直されていないのだろうあせ方をしていて、木肌本来の色をさらしている部分の方が多い。

中の鳥居も同様で、狐たちも陶器の毛並みに土ぼこりを積もらせ、みすぼらしさがいなめない。