「はじめて正解した」

赤ペンで大きく花マルを描いた。「さすが京くん、学年1番」と続けて口許をノートで隠した。

気付かれないように緩ませるけれど、口調で私が笑っているのはバレているだろう。



「すぐに答えがわかるの、すごいね。かっこいいよ」

「……どーも」



頬杖ついてつまらなさそうに言う。

私と同じ色をした艶のある黒髪を掻く。その仕草にドキッとした。



「どうしたの?最近、勉強に目覚めたみたいだけど」

「へっ?」

「ふみの志望先、短大だったのに」



京くんが見つめる先には、無造作に広げられた国立大の分厚い参考書の数々。

私は恥ずかしさのあまり唇をきゅっと閉じた。



「国立、目指すんだ」

「う、ん」



あのね、とひとつ呟く。

笑わないで聞いてほしくて。

バカだね、なんて言わないでね。困ったように首を傾げられるのも嫌、かも……。