畑の中の一本道
自転車を押す女の子の後ろを、大きなバックを背負った男の子がトボトボと歩っている
男の子を気にして振り返りながら歩く女の子が
「な~、隆、落ち込んだってしかたないじゃん」
「あかん、俺、明日、学校、いけん」
「はぁ?、なんで関西弁なの?」
「常連校だぞ、優勝候補だぞ。それが、県予選の初戦で敗退って何だよ。相手は、無名校だぞ、まったく、空気読めっての」
「そんなとこに、負けたあんたらが悪い」
「そうだけどさ、あーっ、優しく慰めたりしてくんないの?」
「甘えんじゃないよ」
「あーぁっ、俺の人生設計、ボロボロだよ」
「人生設計って?」
「甲子園行って、そこそこ活躍して、ドラフトなんか、かかっちゃって、プロ野球選手!」
「あんた、野球馬鹿丸出しな、人生設計だね。そんなこと言ったら、あたしの人生設計だって、ボロボロだよ」
「おまえのって、どんなのよ?」
「あんたらが、甲子園に行って、美人マネージャーって、そこそこ騒がれて、将来的には、、プロ野球選手の美人妻」
「おまえの方がお馬鹿じゃん。美人って、誰のことですか?自分で言って、恥ずかしくないのかね」
「だって、本当のことだし。まあ、今日の今日で、元気出せってのは無理かもし
んないけどさ、元気だしなよ」