I夏休みも、終わりが見えてきた。夏休みの宿題も無事、恵子のを写し終わった。
今日は、近所の夏祭り&花火大会。
夕方から、夜店がでて、祭り会場は、賑わいをみせる。
毎年、恵子と二人で出かけている。昔から、恵子は、浴衣を着て来るが、毎年、今年が一番綺麗だと思う。そして、毎年気になることがある。小学六年の時、勇気を出して聞いてみた。
「浴衣の下って、ノーパンなの?」
グーパンチで殴られた。まあ、いい思い出かな。
祭り会場に着くと、商店街の電気屋のおじさんに声をかけられた。
「タカ坊、タカ坊、まってたんだよ。」
「おじさん、タカ坊っての、いい加減に止めてくれないかな。」
「お前こそ、おじさんって呼ぶなよ。おにーさんだろ!」
「ハイハイ、で、どうしたの?おじさん。」
「こ、こいつ、わざと・・・、まあ、今日は、いいや、それよりな、ストラックアウトって得意か?」
「ストラックアウト?ああ!あの、1から9までの数字のヤツね。やったこと無いけど、自信はあるよ」
「よ~し、いいぞ~、実はな、最近、出店してきた家電量販店があるだろ」
「ああ!できたね。」
「そこが、この祭りにも、参加させろって言ってきたわけだ」
「ふ~ん、まあ、賑わっていいんしゃないの」
「そうなんだけどな、うちの店は、競合店だから、面白くないわけだ!」
「う~ん、話がよく見えないな~」
「だから、その量販店が、祭りに出した店がストラックアウトなわけだ!」
「なるほどね、だから、日頃、量販店のことを面白く思ってない、おじさんは、意地悪をしてやろうと・・・」
「こらこら、みなまで言うな」
「越後屋、お主も悪よの~」
「いや、うちは、竹下電器店だけど」
ここまで、話してたら、恵子が、割り込んできた。
「お~い、なんか、善からぬ相談してるみたいですけど・・・」
「なんだ?嫁は、黙ってろよ。今は、男同士の話をしてるんだよ」
「よ、嫁~!」こらこら、クネクネして、喜んでるみたいだけど、それでいいのか?
「これが、賞品のリストだ」
クネクネしてた恵子が、サッとリストを奪い取る。
「なになに?一列から三列が商品券、四列で、スマホか携帯ゲーム機だって!んで、五列が、大型液晶テレビ。パーフェクトなら、三泊四日の北海道旅行だって、すごいね~!」
電気屋のおじさんが、「あいつら、パーフェクトなんか、出ないとおもってやがるんだよ、だから、ギャフンと言わせてやりてえのさ!」
「お一人様二回まで挑戦できるって」いつのまにか、恵子まで、その気になっている。
ストラックアウトの場所までいくと、結構人が集まっていた。係の人に二回分のお金を渡すと、「隆だ、隆が挑戦するみたいだそ」とか、「隆、頑張れ~」なんて、声援を貰った。俺のことを知ってる人が多いのにちょっとビックリした。一回の挑戦で12球、数字のボードまでは、実際のバッテリー間より、大分近い、これなら、コントロール重視で充分行けると思う。
一球目、まん中の数字を支える枠に当たった。周囲から、おお~とか、おしい~ってドヨメキがおこる。
やっぱり、ブランクが影響してるのかな?軽く、投げ込みは始めたけど、まだまだだな~って思う。
二球目、今度は、まん中のパネルを撃ち抜く。おー!、ヤッターなんて、声が上がる。
次は上段の真ん中をねらう。
狙いどうりに決まる。
調子がでてきたかな?
次は下段の真ん中、これも、撃ち抜いた。
一列ビンゴ!周りの客から歓声が上がる。
調子でてきた!今度は、上段右隅、外れた!観客から、溜め息がもれる。
恵子が、「調子にのるな、コラァ~」って、さすがに、よくわかっていらっしゃる。
落ち着いて、同じ場所を狙う。自分の中で、フォームを確認しながら、ゆっくりと・・・。
結果は、一回目が、二球外しのパーフェクト。二回目は、ストレートのパーフェクト!
二回目が決まった瞬間、その一角に、大歓声が起こり、みんなから、拍手をもらった。
恵子が駆け寄って抱きついてきた。みんなも、俺達の周りの集まって、お祭りの中で、お祭り騒ぎになった。やっぱり、投げるのってサイコー!
騒ぎが一段落した時、ちゃっかり、恵子が、旅行目録を受け取っていたことに、大笑いしたが、まあ、嫁だから、しかたがないか。
人々が段々とバラけていき、挑戦者も、次々と現れているみたいだ。宣伝を兼ねてるんだろう、量販店のハッビを着たお店の人も、喜んでくれている。儲け度外視の、街で創るお祭りだからなんだろうな。
俺の周りに集まった人から、口々に、スゲー!とか、やったな!って誉められた。
ふぅっ、やっと、みんなから、解放された。見回すと恵子の姿が見当たらない。あれっ?あいつ、どこ行った?探さなきゃって、キョロキョロしてると、大きなフクロを両手に持って歩っくる。
「どこ行ってたんだよ?」
重たいんだから、早く持ってよ~って、フクロを差し出すから、受け取り、
「なにこれ?」
「てへへ~、電気屋さんと約束した成功報酬!」
い、いつのまに!
中には、たこ焼き、焼きそば、焼き鳥、唐揚げ、お好み焼き、お祭りセットって言えるものが、大量に入っていた。
さ、さすが、恵子さん、抜け目ない!