寝てた二人を起こして、バスを降りる。
京子ちゃんを送るタベッチに、変なことするなよって声をかけて、追いかけられた。
二人と別れたあと、恵子と並んで暗くなった道を歩いた。
「今日は、楽しかったな、タベッチも、京子ちゃんも、お互い、気に入ったみたいだし」恵子は、黙ったまま歩いている。
「どうした?疲れたか?なんなら、おんぶしてやろうか?」大丈夫って返事は来たけど・・・
「ごめん!」いきなり、恵子が謝ってきた。
「ん?どした?」
「バスの中での、田部井君との話、聞いちゃったから途中から起きてたみたいだな」
「えっ、起きてたの気づいてたの?」
「おう!寝顔も可愛いかったし、涎垂らさないか心配だったから、よく見てた」
プール用具の入ったバックで殴られた。
「涎なんか、垂らさないよ!変なこと言うと殴るよ!」って、今、殴りましたよね?
「やっと、いつもの恵子になってきたな」
「田部井君て好い人だね」
「ああ!俺の友達だからな! 」
「好い人じゃなきゃ、あんたの友達なんかやってられはいよ~だ!」
そうかもな~って言って、俺は、笑った。
「あの試合の後、ふと、思っちまったのさ、自分の力以外で駄目になる事ってあるんだな~って」
「もし、自分で投げて、負けてたら、もっと違う気持ちになってたかもしれない」
「俺って、神様に嫌われてるのかなって、どんなに頑張っても、お前の夢は叶わないんだ!って言われた気がした」
「これからだって、頑張ったって、もし、怪我して、投げられなくなったらとか」
初めてだ。自分のモヤモヤを話したのは。
「あんたね~、そんな難しい事、考えてたんだ。 よく、頭、ショートしなかったね」
おいおい、まるで、俺が、お馬鹿みたいに聞こえるんですけど。
「あんたはね、考えて答を出せるタイプじゃないんだよ。行動して、答を探すタイプなんだから、立ち止まってても、何も変わらないよ」
「わかっちゃいるんだけどな」
「それに、あんたは、神様に、メチャメチャ愛されてるよ。そんな、人が羨むような才能もらって、尚且つ、試練までもらってるんだから」
「試練は、いらね~」
「神様は、乗り越えられる試練しか与えないって言うひとがいるの。私もそうだと思う。あと、これは、私の考えだけど、神様は、乗り越えて欲しい人にしか、試練を与えないと思う。愛されてるから、試練を与えられたんだと思う」
神様って、サディスト?
俺の考えてることが、分かったのか、馬鹿、更なる成長のためだ!って言われた。