土曜に、家にいるなんて、何年ぶりだろう。
中学、高校と、部活命だったからなー。
月曜から、土曜の、朝から晩までずーっと練習、日曜は、疲れて死んだように寝てたしなー。
こうやって、暇な時間が出来るともて余すもんだな。
勉強でもしてみるか、なんて、久しぶりに、教科書を開こうとして、カパンを開けたら、教科書は、学校の机の中のだった。お約束だーって、自分のアホさ加減に落ち込んでると、
いきなり、部屋の扉が、ガバーツと開いた。
「おはよー」
「おぉぅ!」
「何してんの?」
当然のように、恵子が立っている
「おまえなー、一応、ノックぐらいしろよ!」
なんでー?って、言いながら、ズカズカと部屋に入り込み、ベッドに腰かける。
「こんど、恵子の部屋に、いきなり、入ってやろうか?」
「キャーッ、隆って、変態!」
なんで、自分は良くて、俺は変態なんだ?って考えたけど、考えたら負けだって、今までの付き合いで、充分に学んだ。
「何してたん?」
机に向かっている俺が珍しいのか、しげしげと眺めながら恵子が言った。
「べ、勉強でもしようかと」
「ほーっ、何の?」
「数学とか」
「ほーっ、数学ですか?どれどれ、才色兼備な、おねーさんが教えてあげよう。教科書は?」
「学校」
あーっ、ハイハイって感じで、
「じゃあ、何か、判らないとことかある?」
「何が、判らないかすら判らない」
恵子は、フゥーッと溜め息をつくと
「じゃあ、授業の内容は?今、何してたの?」
「授業中は、寝てる時間だったし」
手近にあった野球雑誌で殴られた。
「これだから、野球馬鹿は!」
頭を抑えながら、すいませんと謝っておく。
うちの学校は、スポーツ系の生徒に甘すぎるんだよね、とか、文句を言っている。
「ところで、今日は、何しにきたの?」
ブツブツ言っている恵子に、恐る恐る聞いてみる。
「おぉ!忘れるとこだった。久しぶりの休みで、どうせ、暇だと思ったから、デートのお誘いにきてやったんだよ」
何で上から目線?って思ったけど、口に出さずに、
「それで、そんな、オシャレ・・・普通の格好してるんだ」
俺の言葉に、
「なぜ、オシャレで、カワイイと、言えない?」指をボキボキと鳴らす真似をされた。
「いや、カワイイよ」慌てて言い足すと、そう?、とか言って、スカートの裾を手でつかんでポーズなんかとっている。
恵子のスカート姿なんて、久しぶりにみたな~、いつも制服か、ジャージばっかりだったよな。
「カワイイからって、そんなに見つめられても」わざとらしく、テレテレなんてしてる恵子に、
「馬鹿、そんなんじゃねーよ」
「ホホーッ、かわいくないと?」
身の危険を感じたから、「いや、カワイイです」と言って、許してもらった。
「着替えるから、下で待ってろよ」
ホホーイと言って楽しそうに恵子は階段を降りて行った。