「ねぇ瞬さ……もう少し優しく断ったらぁ?」
僕は学園内で生徒全員に配布されている中空映写式携帯端末フルレスコンタクター――通称デバイスと呼ばれている――から映しだされる反透明の映像に指を流しながらそんな言葉をふと瞬に投げかけていた。
「は?別にいいだろ。俺の身体は俺のもんだからな」
「いや、そういう事じゃなくてさ」
問いかけに対する返事が極端に飛躍する所も相変わらず。
少し天然の所がある瞬だが、そんな所も僕は嫌いじゃない。それは本人には絶対言わないけど。
「あ、ここ!第五区の小湊天文公園、まだ行った事ないよね。花火かぁ、近くで見てみたいなぁ」
「第七区?あぁ、あそこは危ねえから止めとけって言っただろ。他無いのかよ、他」
「えぇ……そんなん言うなら瞬も探してよ」
「俺は……その何たらっての?操作がめんどいんだよ」
瞬はデバイスの操作が苦手だった。
当初学園に入った時はそこそこ使い勝手を覚えようと必死だったものだが、やはり電子系は苦手なのかいつも僕に操作方法を聞きに来ていた。
今考えれば瞬があまり授業に顔を出さなくなったのもこのデバイス操作が苦手だと言うその事が恥ずかしかったからなのかもしれない。
とりあえず僕はそんな瞬の言葉を聞き流しながら他に夏祭りが盛り上がりそうな場所を探す。


