「あ、あの!日向君」
「んぁ?」

「え、えと……よ、よかったら今年の夏祭り一緒に、どうかな。その……ほらもう卒業だし、最後だし……その。あ、あれだったら他に友達も誘って皆で、でも、いいけど……」



 最新科学を駆使して作られたらしい味気もない白一色の教室でも、こう言った話題があるとやはり改めて自分達の若さを実感してしまう。


 先程まで愉しそうに笑っていた瞬こと日向瞬は、顔を顰めて目の前に現れた肌の少し浅黒い、如何にも遊んでますといった風体である二人の女子を一瞥した。

 これは瞬にとっては毎度の事、つまりは夏休みより頻繁な慣例行事と同じである。

 瞬は頭こそあまり良くはないが、その外見は誰が見ても芸能界アイドルクラスの美青年なのだ。
 金色に染め抜いた髪色も最早生まれつきかと言わんばかりにその風貌へ馴染んでいる。たまに顔を出す学園の運動能力テストでも瞬を上回る者はいないし、巷では瞬に喧嘩で勝てる奴もいないと有名な程。
 まあ端的に言えば、それだけの理由で瞬は猛烈にモテるのだ。

 自分の幼馴染ながら誇れる所の多いそんな瞬だが、この後に返す言葉はいつも同じ。
 僕は遊んでいそうな女子達が健気に瞬を誘う姿に若干負い目を感じながら、ご愁傷さまと内心で祈った。