創星18年。
 地球の夏はこんなにも寒かっただろうか。

 館内でわざとらしく演出される蝉の鳴き声はあの日を否応なく思い起こさせた。
 耳障りなヒーリングミュージック、いつかこの音を変えさせてやろう。
 そんな事を思いながら、フォラスグループバイオメディカル部門研究員の結城咲元は手入れの行き届いた廊下を歩く。




 ――解っている、この寒さはこの館内空調が効きすぎているからだ。決して君が居なくなった代償が僕の心に穴を空けている訳じゃない。
 僕には野望がある。
 その為なら全てを投げ打って、人間をも超越して、神にも背こう。

 だって君だ・け・は、きっと、また僕の前に現れるのだから。