隆史はさっきまで一緒にいた
奈津のことを考えた。
自転車を必死で漕いで
今、弘美の元へと向かっているにも
かかわらず、頭と心の中を
奈津が独占してることを
感じていた。

奈津が自分のことを好きだと
言ってくれたこと。
それだけで自分には勇気が
沸いてきた。

『やっぱり俺は単純だ』

そして、今から告げなくていけない
ことを、相手を考えて
辛い気持ちになった。

幼い頃からずっと
自分の側にいてくれた
支えてくれた彼女に
今から伝えなくてはいけない。

そう考えると
告白されたわけでもないのに、
どうやって伝えようかを
考えると気持ちはドンドンへこんで
いきそうになった。

その自分を止めるのは奈津の
笑顔だった。
ずるいかもしれないが、
奈津を守るためには
避けてはいけないことだと
自分を奮い立たせた。